くらすひ

ぼんやりしているくらしの雑記

呼吸の湿り気

健康診断を受けた日、ふと思ったことは、なんだか健康診断って、果物の缶詰が、ベルトコンベアに乗っているさまみたいだな、ということ。血圧を測って、体重計に乗って、視力検査をして、聴力を検査して、レントゲンをとって、血液を採ってもらって…。案内されるがまま、流されるまま、一定のリズムで、からだのなかみをみてもらう。氏名、性別、年齢が印字された、ラベル。わたしはちゃんと、甘いシロップで満たされているのでしょうか、みずみずしいのでしょうか、わたしはわたしのからだで生きているというのに、そのからだのなかみのことは何も知らない。ので、診察室で自分のレントゲンをみるのは、ちょっとこわい。

看護師さんやお医者さんはみんな、てきぱきと身体を動かして、そしてやさしい。「ちょっと痛いですよ」と腕に注射針を刺されたけど、あまり痛くなかった。すごいお仕事だと思う。わたしにはできない、お仕事。

総合病院の自動ドアを出ると、冷え冷えとした空気が肺にスーと入ってきました。マフラーに顔を埋めたら、わたしの吐く息は湿っていてあたたかかく、「よしよし、ちゃんと、わたしのからだは頑張っているのだな」となんとなく言い聞かせたいきもちでした。

缶詰の保存期間は長いけど、いつかゆっくりとそのなかみはくずれていってしまうということ。それを理屈では分かっていながら、おなかがすいたわたしは、病院の消毒液の匂いをかいだわたしは、マクドナルドへ行って、チーズがたくさんはさまったハンバーガーを食べました。抗いたかったのかもしれません。とても、おいしかった。

なるべくシンプルに、バランスよく。でもたまに、むちゃなことして、すごしたいな。そんなことを思った冬の日。