くらすひ

ぼんやりしているくらしの雑記

映画「私の男」―流氷を跳ぶ

映画「私の男」を観ました。2014年製作。原作は桜庭一樹、これは図書館で借りて読みました。5年ほど前かもしれません。大学生だったあのころ、背表紙のタイトルを見て、大人の女性が発している言葉だと思いました。「私の男」。読み始めると、主人公の女の子は高校生でした。

 


映画『私の男』予告編

 

この女の子を演じるのは二階堂ふみちゃん。今をときめく女優さんですが、わたしは彼女のことが大好きです。その目が、髪が、脚が、話し方が、なんとなく好きです。この映画は、彼女のそのなんとなく惹かれてしまう部分を、まざまざと見せつけられてしまった気がしています。

 

浅野忠信さん演じる淳悟と、ふみちゃん演じる花の、ふたりの禁断の恋愛模様を描いています。

淳悟という男と、花という女。とてつもなくお互いを欲していて、どうもがいても抜け出せない。だけど、ほんとうは、普通の家族でありたいと思っている。だってこんなのは、何かを失って、何かを破綻させていくに違いないと分かっているから。そんな二人を見ていると、とにかく「このふたりだめだな」と思いました。でもこの「だめだな」というのは、こんなに絶対的な存在同士がぶつかり合っていることに対する羨望なのかもしれません。わたしはちょっとだけ、花がうらやましかった。

 

好きなシーンを書きます。話の前半には、淳悟の恋人である「小町さん」という女性がでてきます。小町さんは淳悟と花の関係が、ただならぬものであるということに、少しずつ気づき始めます。

「淳悟に殺されるのって、小町さんだったらやだ?」「小町さんて美人だよね。美人薄命。言ってみて」「あの人ね、寂しくてずっと我慢してるの。家族って心がほしい、それだけでいいって。知ってた?」「他人じゃだめなの。分かる?」

花が小町さんに、屈託なく言う台詞です。高校の制服姿で、髪をふたつくくりにして。(こんな高校生が目の前にいたら、失神してしまいそうです。)

 

浅野さんが涙を流すシーンも、すきでした。まっとうになって、何も考えずに生きられたら、それが一番楽なんてことは、わかっているんです。でも、からだはもとめてしまうんですよね。

血の赤、流氷の白、むせかえるようなゴミだめになった部屋。印象的な画もたくさんありました。冬の北海道の海、流氷の鳴く音が聞こえてきそうです。

 

 

補足。ちょこっとでてきた、高良健吾くんが良かったです。「ふつうの男の子」を演じていて。