くるくる
小雨の降る夜、自転車置き場でみかけたカップルの会話を聞きました。駅前には随分昔からある、パン屋さんがあって、男の人がそのパン屋さんの袋を抱えていました。女の人は、ちょっとご機嫌ななめなのか、つよい語気で、彼を置いてすたすたと歩いてゆく。
「パン、ぬれちゃうよ」
「ちょっと、くるくるしてッ」
「ちょっとくるくるして」。男の人が自転車の前カゴにパンの袋を入れようとしたとき、雨に濡れないように袋の口をくるくるしてよねって、ちょっと怒った口調で言っていたの、なんだかかわいかった。
雨の夜に、ふたりに何があったのでしょうか、彼女が何をみて、何をきいて、怒ってしまったのか、わからないけれども、おいしいパンを買って帰るのだからだいじょうぶですよね。
あのお店のカレーパンはおいしいんです。